世はすべて美しい織物
昭和12年。養蚕農家の娘・芳乃にとって、創作織物はどこまでも自由に心を羽ばたかせる、とっておきの遊びだった。ある日、桐生の有力買継商のもとへ嫁いだことで、その人生は大きく揺れ動きー。一方の現代。母の束縛に苦しむ詩織は、「機織り工房」を唯一の居場所にしていた。ある出来事をきっかけに、その居場所さえ失いかけた詩織は、実家を抜け出し、大規模な手しごと市が開催されるという桐生へと向かうのだが…。詩織の出生の秘密、そして、いわくつきの反物「山笑う」に託された想いとは。交わってはならなかったふたりの人生が折り重なるとき、思いもよらぬ奇跡が訪れる。抑圧と喪失の「その先」を描く、感涙必至の手仕事×家族小説。