何もない日常には、何かある。気付かずに通り過ぎでしまう、些細な出来事。主人公のいない、だからこそ誰もが主人公になりうる物語。その展開図を描いて見せる、異色の作品集。
横断歩道に落ちていたミョウガ、消えたカミソリの刃、失われた指先、かんぬきを掛ける男。何でもない日常の事物にふと目をとめると、そこから世界は変容し始める。そんな違和感を描いた表題作「あるべき場所」。友人がタイから持ち帰ったいわくつきのナイフ。それを手にした者は誰を殺すのか。人間の心理に潜む恐怖をえぐる「飢えたナイフ」など、奇妙な味わいの5編を収めた短編集。 1994/06/01 発売