“私小説”を生き続ける著者の、三島賞受賞後を画す、待望の中短編集。男と女、父と子、出会いと別れ、生と死…。生きていくことのいのちの手ざわりを瑞々しい感覚で描き出す。
青年は若すぎる年齢で夫となり、父となった。電気工として、小説家として、妻とおさな子三人を懸命に支える日々-。都会を離れ、北関東での心細い借家探しを通して生きることの危うさを捉えた「古河」。父と子の幸せな瞬間とその隣合わせで待ち構える崩壊の兆しを描いた、傑作「木の一族」等、普遍的な家族の原風景といのちの手ざわりを美しく切実な言葉で綴る珠玉の中短編4編。 1997/03/30 発売