汚名
藍子叔母は、いつも物憂げで無関心で孤独だった。まるで、心の内部に暗くて深い裂け目が横たわっているかのように。ふとしたきっかけで叔母の謎多き過去を調べるようになった私は、叔母の旧友という老婦人から、古ぼけた八ミリフィルムを見せられた。そして、その中に写し撮られていたのは、初々しく、朗らかで、健康的な美しさを持つ、女学生時代の叔母の姿だった。いったい何が叔母を変えたのか。香気あふれる文芸ミステリー。
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汚名汚名
イザベラはローマの街角のさびれたカフェで、身重の体を抱え、住み込みのウエイトレスとして働いていた。愛するアントニオにいわれのない濡れ衣を着せられ、豪奢なアパートメントから身ひとつで追い出されたあの日、彼の兄ジョヴァンニは、弟の誤解を解いてやると言ったのだ。藁にもすがる思いで彼についていったイザベラは、長年にわたる兄弟間の確執など、知るよしもなかった。ジョヴァンニはイザベラに慣れない酒を飲ませ、そして…。絶望の淵をさまよいながらひっそりと身を隠すイザベラの前に、あろうことかアントニオが現れ、蔑みの形相で驚愕の事実を告げた。「兄は死んだ。そして、なぜか君に莫大な遺産を遺している」『生け贄の花嫁』で鮮烈なデビューを飾った大型新人の新作。イタリア人富豪兄弟の狭間で残酷なまでに翻弄されるイザベラ。いわれなき汚名の元凶となった兄亡きいま、アントニオの愛を取り戻せるのか。そしておなかの子の運命は…。 2014/07/20 発売