小説むすび | 覘き小平次

覘き小平次

覘き小平次

発売日

2025年4月22日 発売

もう誰に向けて話しているのでもない。梦(くらがり)はいっそうに深くなり、闇と影とのただ中には、最早誰がいるものやら、いっこう判りはしないのだ。目を凝らしても淡朦朧(うすぼんやり)と、幽かに人形が浮かぶだけ。誰とも知れず、顔も罔(な)いならそれは、正に幽霊である。

 幽霊と話しているようなものだ。(本文より)



幽霊役のみ天下一品の役者・小平次。家では押入に引きこもったまま、彼を疎んじる妻と暮らす。ある日、囃子方の多九郎が高額の旅興行の話を持ってきたが、その裏には小悪党の又市がいるという。山本周五郎賞受賞作。

〈解説〉斎藤環

京極夏彦「第一六回山本周五郎賞受賞のことば」

縄田一男「甦る幽霊たち 「京極怪談」の意義」

を増補した決定版

関連小説

このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP