小説むすび | 死の味(上)

死の味(上)

死の味(上)

聖具室の中は、教会とも思えない地獄絵さながらの光景だった。喉をぱっくりと切り裂かれた二つの死体が血溜りに横たわり、傍らには血糊のついた剃刀がころがっている。ひとりは浮浪者のハリー・マック、そして、いまひとりは、あろうことか、元国務大臣の准男爵ポール・ベロウン卿だった。現場の状況以上に、ベロウン卿の死の直前の行動は不可解だった。突然辞表を提出し、いっさいの公的生活に背を向け、死の晩には、訪れる人も少ない教会に、なぜか一夜の宿を求めてきていたのだ。卿の心中ではいったい何が起っていたのか?謎に満たちスキャンダラスな事件の捜査を指揮するよう命じられたダルグリッシュ警視長は、名門ベロウン家に足を踏み入れ、卿の生前の行動を追いはじめた…イギリス女流本格派第一人者が満を持して放つ待望の本格巨篇。英国推理作家協会賞受賞。

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