季節の終り
オフィスは相変わらず閑散としていたが、私立探偵サムスンの胸は期待に膨らんでいた。テレビで“昔ながらの探偵”として紹介されたのだ、きっと山のような依頼が…依頼は二件あった。そのうちの一件は、インディアナポリスの有名な銀行家ダグラス・ベルターとその妻ポーラからで、つい最近、ポーラの出生証明書が偽造されたものであることが判明したので、その理由を調査してほしいという依頼だった。サムスンは50年前の記録を調べ、ポーラが実は養子だったことを突き止める。ポーラが養子にもらわれた背景には、いったいどんな事情があったのか?やがて、過去の調査を続けるサムスンの前に驚くべき真相が浮かび上がってきた。人びとの記憶の片隅に埋もれていた過去の悲劇を叙情的に甦らせる、知性派ハードボイルドの最高作。