小説むすび | メキシコの涙

メキシコの涙

メキシコの涙

弁護士は喉を掻き切られ、デスクに突っ伏して死んでいた。わたしは急いでキャビネットを探り、関係書類を宿泊中のホテルに持ち帰った。そもそも、昔の恋人カールの依頼など受けなければよかったのだ。だが養子にしたメキシコ人の子供を返せと脅迫をうけている、といって泣きついてきたカールをむげに追い返すわけにもいかなった。わたしは交通違反や離婚訴訟の弁護を放り出し、養子を斡旋した弁護士に会いに、アルバカーキからメキシコ国境ぞいの町に飛んだ。ところが、養子斡旋の際の事情に精通しているはずの弁護士は、詳しい話を聞く前に殺されてしまった。芯が強く、助けを求めてくる者を捨ててはおけないアルバカーキの女弁護士ニール・ハメル初登場。

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