真夜中の訪問客
夜明け前のフィレンツェは,森閑と闇に沈んでいた。通報をうけて現場に急行する見習い将校のバッチ憲兵は、不安を抑え、面倒な事件ではありませんようにと祈った。だがその願いもむなしく、呼びだされた先のアパートメントの部屋には中年男の死体が転がっていた…。殺人事件だった。被害者の部屋にあった身分不相応とも思える高価な美術品はどこからきたのか。そして事件当夜に被害者が待っていた訪問客とは。はじめての大事件で戸惑うばかりのバッチ憲兵は、風邪で寝込んでいる上司のグアルナッチャ准尉に相談するが、なんら手がかりも得られぬまま、第二の事件が起きた。メグレ・シリーズの巨匠シムノンが絶賛した英国女流推理作家のデビュー作、遂に登場。CWA新人賞候補作。