小説むすび | ソ連に幽霊は存在しない

ソ連に幽霊は存在しない

ソ連に幽霊は存在しない

後ろから突き飛ばされた男の顔から笑みが消え、かわりに驚愕の表情が浮かんだ。恐怖に顔をひきつらせ、必死にバランスをとろうとする。だが、こらえ切れずにエレベータに足を踏み入れた男は、そのまま床を通り抜け、断未魔の悲鳴をあげながら落ちていった。現場に駆けつけたチスレンコ主任捜査官は、死体も突き飛ばしたほうの男も発見できなかった。党の大物委員長から要求されたことは、ソ連に幽霊は存在しないことを証明し、この騒ぎが悪意に満ちた西側帝国主義諸国の陰謀であると暴きだすことだった。しかし、大勢の目撃者に会い、調査をすすめればすすめるほど、事件の不可解さは深まって…。ペレストロイカ以前のモスクワを舞台に官僚機構を襲った幽霊騒ぎの顛未を描く表題作ほか、英国ミステリ界の鬼才が皮肉とユーモアをこめて贈る、ヴァラエティ豊かな傑作短篇集。

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