ナイト・マネジャ-(上)
チューリヒの名門ホテルのイギリス人ナイト・マネジャーであるジョナサン・パインは、雪の夜、忘れることのできない過去と遭遇した。貿易商リチャード・ローパー。その夜ホテルを訪れた彼こそ、ジョナサンが愛した女ソフィーを、自らの手で死に導いてしまう元凶となった男だった。おりしも、イギリスの情報部から独立した新しいエージェンシーを任されたレナード・バーは、ローパーを仕留めるべく網を張っていた。世界中に武器を売りさばいて巨利をむさぼる死の商人であるローパーを、同じイギリス人として許せなかったからだ。ジョナサンの存在を知ったバーは、ローパーの違法取り引きの証拠を握るために彼をリクルートしようとする。愛国心から、そしてソフィーへの贖罪の気持ちから、ジョナサンは危険な任務を引き受け、経歴を偽ってローパーに接近していく。軍需産業に骨ぬきにされた英米政府の思惑と妨害のなかで孤軍奮闘するバーの新エージェンシー、そしてただひとり死の商人の懐深く潜入していくジョナサン。冷戦後の真の敵を見据え、エンターテインメントの醍醐味を堪能させる最新作。