真紅のレクイエム
ピットマンはかつて優秀な記者だった。息子の死の傷手から立ち直れず、酒に溺れていたが、危篤の報が入ったある人物の死亡記事を生涯で最後の仕事とし、その後は自殺しようと心に決めていた。その男は、アメリカの外交政策を陰で操る五人の「大顧問」のひとりで、元大物外交官だった。病院から拉致された男の居場所を突きとめた彼は、そこで一堂に会した「大顧問」の姿を目撃し、さらに病床に伏す男が発した謎の言葉を聞いてしまうが、あえなく見つかってしまい、命からがら逃げ出すことになる。翌朝のニュースを見た彼は愕然とした。例の男は殺害され、犯行の容疑者として、自分の名が報じられていたのだ。かくして、ピットマンは「大顧問」たちから追われる身となった。だが、逃避行の中途で助けを求めた看護婦ジルの優しい愛情に触れるうちに、一度は死を決意した彼の心に、今一度、生への強い欲望が湧きあがる。そして、男が残した謎の言葉を手がかりに、歴史の闇に葬られていた「大顧問」の恐るべき過去が明らかになった時、決死の反撃の火ぶたが切って落とされた…。