悪意のM
いとこのターシャがわたしに仕事を依頼してきた。カリフォルニアで三本の指に入る大手建設会社、マレック建設の経営者バーダー・マレックが亡くなり、四人の息子が遺産を相続することになったのだが、そのうちのひとりで、十八年ものあいだ行方知れずになっている次男のガイを捜しだしてほしいというのだ。わたしは簡単にガイを見つけだした。かつて一家の厄介者だったガイは、今ではすっかり更生していて、過去の罪を償うべく教会でボランティアをつとめる真面目で実直な人間に生まれ変わっていた。しかし、父の死をきっかけに家族との壊れた関係を修復しようと一家に戻ってきたガイは、就寝中に殴殺され、無残な死体となって発見されてしまう。わたしがガイを見つけだし、連れ帰ってきたのは間違いだったのだろうか?言葉にならない罪悪感と哀しみに心引き裂かれながらも、女探偵キンジー・ミルホーンの孤独な調査がはじまった…。