小説むすび | 息をひそめて

息をひそめて

息をひそめて

1960年代、ウェールズ。港町カーディフのイタリア系移民地区に住むガウチ家は、食べる物にもことかく貧しさに喘いでいた。父フランキーは賭博に溺れ、自分勝手で家庭を顧みない。妻メアリと6人の娘たちはその理不尽な暴力に抵抗するすべを知らなかった。幼い末娘のドロレスは誰にも世話をしてもらえず、生後まもなく家族の不注意による火事で左手指を失っていた。姉たちの心がすさみゆく中、懸命に生きるドロレスがただ一人打ち解けられたのは四女フランだけだった。しかし、炎に異常な執着を持つフランは、廃屋に火を放ち矯正施設に送られてしまう。そんな崩壊寸前の家族にとって、長女チェレスタと裕福な商人との結婚話は、経済的にも幸福の兆しとなるはずだった。しかし結婚式の夜、ついに事件は起こった…ドロレスの無垢な目を通して、絶望の底にいる人間の弱さと哀しさを静かに、鮮烈に映しだす衝撃のデビュー作。

このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP