繊細な真実
ポール・アンダースンの偽名を与えられた外務省職員は、英領ジブラルタルのホテルの一室で苛立ちを露わにしていた。彼は閣外大臣クインの代理として、テロリスト捕獲のための“ワイルドライフ作戦”に顧問として参加していた。だが、秘密任務に関わった経験は皆無で、なぜ自分が呼ばれたのか見当もつかない。やがてポールは、作戦が成功裏に終了したとだけ告げられ、任を解かれる。一方、クインの秘書官トビー・ベルは、大臣の不審な行動を監視していた。ジブラルタルでの作戦には胡散臭い民間防衛企業の男の影がちらついていたからだ。しかし、トビーの調査には隠蔽を謀る官僚たちの厚い壁が立ちはだかり…。“ワイルドライフ作戦”とは何だったのか?スパイ小説の巨匠が描く、世界の新たな闇。