天国への電話
2011年3月11日。津波が母と娘を呑み込んでから、ゆいの時間は止まったままだった。海から逃れるようにして東京でラジオパーソナリティとして働いていた彼女はある日、「風の電話」の噂を聞く。岩手県大槌町の庭園に置かれたその電話ボックスはどこにもつながっていないが、亡くなった人ともう一度話したい人びとが訪れるという。ゆいは庭園を訪れるものの、なかなか二人に話しかけられない。そんななか、妻を病気で亡くし、娘と暮らす毅に出会う。実在する「風の電話」を通じ、喪失の痛みから癒えていく人びとを、イタリア人作家がやさしい筆致で描く感動の長篇小説。