母は夜更けに爪を切った。てこじいのうずくまっているそばで。ふらりと現れた謎めいた祖父に、僕は魅かれてゆく…。忘れられない町、忘れられない時を瑞々しく描く最新刊。
西日を追うようにして辿り着いた北九州の町、若い母と十歳の「僕」が身を寄せ合うところへ、ふらりと「てこじい」が現れた。無頼の限りを尽くした祖父。六畳の端にうずくまって動かない。どっさり秘密を抱えて。秘密?てこじいばかりではない、母もまた…。よじれた心模様は、やがて最も美しいラストを迎える。 2005/10/07 発売