火の国の城 上
風呂の客のたくましい躰には傷痕がきざまれていた。(この客どの…もとは武士や)湯女の乳房が、客のあたまの上でおもたげにゆれている。後から入ってきた客がうかべたおどろきの表情に、二人とも気づかなかったようだ。伊那忍びの丹波大介は生きていたー。関ヶ原の戦から五年、きなくさい京で、忍びの血が呼びさまされた。
風呂の客のたくましい躰には傷痕がきざまれていた。(この客どの…もとは武士や)湯女の乳房が、客のあたまの上でおもたげにゆれている。後から入ってきた客がうかべたおどろきの表情に、二人とも気づかなかったようだ。伊那忍びの丹波大介は生きていたー。関ヶ原の戦から五年、きなくさい京で、忍びの血が呼びさまされた。