赤い月(上)
昭和20年8月9日、ソ連軍は突如、満洲に侵攻を開始した。その頃、牡丹江の森田酒造では、保安局の氷室が、白系ロシア人家庭教師エレナをスパイ容疑で斬殺する。栄華の絶頂から奈落の底へ。二人の子供を抱えた森田波子の苦難の逃避行が始まる。自らの引き揚げ体験を元に運命の転変と戦争の悲劇を描く感動の長篇小説。
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夢と野望を胸に渡った満洲の地。広大な原野に立ちすくみ、馬賊の襲撃に怯えつつも、森田勇太郎は着実に地盤を固め、森田酒造を満洲一の造り酒屋にまで成長させていく。だが、「同じ着物は二度着ない」とまで言われた栄華も長くはなかった。夫・勇太郎の留守中、ソ連軍の侵攻と満人の暴動に遭い森田酒造は崩壊。妻・波子は二人の子供を抱え、明日の命すら知れぬ逃亡生活を余儀なくされる。夫との再会を信じ、ひたすら故国を目指す波子。しかしこれは、波子を呑み込む過酷な運命の始まりに過ぎなかった。母、満洲、極限状態。直木賞受賞第一作。 2001/05/20 発売
果華の絶頂から一転、奈落の底へ。頼りにしていた夫との再会も束の間、勇太郎は強制労働に取られ、病で命を落としてしまう。すべてを失い、夫の屍を乗り越え、食うや食わずで二人の子供を守る母・波子。そんなとき、密かに思いを寄せていた男・氷室の消息が聞こえてきた。再会に胸躍らせる波子だが、彼女の前に現れたのは、阿片に体を蝕まれた廃人同然の男だった…。母として子供を守るか、女として一人の男を愛するか?極限の選択が波子に迫る!家族、愛、究極の選択。自伝的大作。 2001/05/20 発売
曾孫よ、100年の謎を解いておくれ!大正4年、ホノルル。日系人御用達のホテル・白木屋に宿泊していた大富豪の美しい若妻・リヨが、海岸で謎の死を遂げる。その指からエメラルドの指輪が消えていた。リヨに憧れていたホテルの奉公人・直吉は必死に真相を探るが、わからずじまいに終わる。平成20年、横浜。直吉の曾孫にあたる大学生の慶一が、ネット・ショップでエメラルドの指輪を目にする。それは、曾祖父の遺品のガラス玉の指輪とそっくりだった…。ホノルルに実在したホテルを舞台に、ハワイ移民の秘話も盛り込んだ意欲作。 2009/06/30 発売
満洲の牡丹江にある森田酒造の店主・森田勇太郎は、馬賊の襲撃に怯えながら関東軍の協力もあって森田酒造を満洲一の造り酒屋にした。勇太郎・波子の娘・美咲の家庭教師だった白系ロシア人のエレナは、森田家に出入りしていた恋人氷室啓介によって家族の目の間で処刑された。いったいエレナに何があったのか。映画・テレビドラマ・ラジオドラマ・舞台上演などがなされた著者の代表作。 2019/06/15 発売