フーコン戦記
「死の谷」を意味する北ビルマの広大な谷地フーコンで、日本軍はインパール戦に並ぶ必敗の愚かな戦いを演じた。片腕を失い生還した元兵士は、ながい平穏な戦後、老いを重ねる。問い、反復、忘却、諦念。記憶の年輪ともいうべき稀有の文学世界。三部作の最終作であり、作家自身の遺書ともいうべき名篇である。
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フーコン戦記フーコン戦記
戦争末期、雲南の地で日本人兵士がほぼ全滅した騰越・龍陵の戦い。そこからほど近い旧ビルマの“死者の谷”フーコン谷地でも、全滅の危機に瀕している部隊があった。-ああこれでは勝負にならない、と一等兵でも思う。そう思いながら戦闘をしたのであった。敵は…必要な条件を整えたうえで戦った。こちらは、弾がなくても、食糧がなくても、とにかく、やれと言う。…弾がなくても食糧がなくても、一人が二十人殺せば二十倍の敵に勝てるわけだから、そうしろと言う。-六割以上が亡くなった無謀な戦いから、片腕と引き換えに生還した村山辰平は、あの戦闘で夫を亡くした中川文江とともに、フーコンで自分がたどった場所を地図に記していく。それは、将官への怒りを新たにする作業でもあり、「諦めながら恨む」作業でもあった。 2024/08/08 発売