大地の子 四
「宝華、万歳!」「初出銑、万歳!」万雷の拍手と大歓声が湧き起った。七年がかりで完成した日中共同の大プロジェクト「宝華製鉄」の高炉に火が入ったのだ。この瞬間、日中双方にわだかまっていた不信感と憎悪が消え去った。陸一心の胸には、養父・陸徳志の、「お前、いっそのこと日本へー」という言葉が去来する。
関連小説
大地の子 上大地の子 上
文化大革命の嵐の中で迫害される中国残留孤児。関東軍に置去りにされた満洲開拓団の孤児たちのたどる苦難の道を、雄渾に描いた会心の大河長篇。文芸春秋読者賞受賞。 1991/01/10 発売
大地の子 一大地の子 一
日本人戦争孤児で、中国人の教師に養育された陸一心。肉親の情と中国への思いの間で揺れる青年の苦難の旅路を、戦争や文化大革命などの歴史を背景に壮大に描く大河小説。(清原康正) 1994/01/08 発売
大地の子 二大地の子 二
陸一心の本名は松本勝男。日本人戦争孤児である。日本人ゆえの苦難の日々を経て、彼はようやく日中共同の大プロジェクト「宝華製鉄」建設チームに加えられた。一方、中国に協力を要請された日本の東洋製鉄では、松本耕次を上海事務所長に派遣する。松本はかつて開拓団の一員として満洲に渡り、妻子と生き別れになっていた…。 1994/01/08 発売