晩鐘 下
辰彦は第一回文藝賞を受賞。新しい事業も起ち上げ、毎日上機嫌だった。しかし、杉にとって辰彦はいつしか「ヘンな人」になっていた。案の定、辰彦の会社は倒産、原稿料欲しさに書いた小説で、杉は直木賞を受賞、娘を抱えて必死に生きた。当時の文学仲間はもう誰もいない。枯淡の境地で、杉が得た答えとは。畢生の名作、誕生。
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晩鐘晩鐘
私の夫であったあなたは、いったい何者だったのですか?老作家・藤田杉のもとにある日届いた訃報ー。それは青春の日々を共にし、十五年のあいだは夫であった畑中辰彦のものだった。尊敬し信頼もしていた辰彦が後に杉を苦しめ、「ぼんくら」「明るい詐欺師」と呼ばれたのは、いったいなぜだったのか?遠い記憶の中に、杉は辰彦のほんとうの姿を探し始めた…。「戦いすんで日が暮れて」から四十五年、佐藤愛子が人生のすべてを懸けて描く鎮魂歌。 2014/12/06 発売