征途(1)
1995年8月15日、沖縄県嘉手納宇宙港。藤堂輝男は、宇宙往還機第一号の機長席に着いた。日本は初めて自らの手で日本人を宇宙に旅立たせようとしていた。近海には海上自衛隊の大型艦、世界各国のマスコミと30万の見学者のなかに初老の提督の視線があった。藤堂進。次男の雄姿を孫娘と見送るためだったが、同時に沖縄に海に眠る父への思いをはせた…これより半世紀前、1944年10月24日、藤堂進中佐は、レイテに進撃していた。藤堂家の男たちに流れる海の防人の血。国家と家族の運命を糸に描く壮大作。
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征途(2)征途(2)
1951年10月、福田定一は戦車中隊を卒いて北海道南部にあった。太平洋戦争後、日本帝国は崩壊し南北に分断されたのである。日本民主主義人民共和国人民空軍大尉・藤堂守は、MIG15を操って列機を従え高度7000を飛行中だった。日本占領軍総司令官・J・パットン大将は、函館周辺に追い詰められている国連軍の窮状を打開するために上陸作戦を開始した。アイアン・フィスト作戦である。合衆国に接収され旧呉工廠で改装された〈やまと〉が出撃した。総反攻を前にソヴィエトは義勇艦隊を結集させた。超弩級篇。 1993/08/31 発売