日本の威信と将来を担う人々の姿、奇跡のような瞬間が、奈良の都に満ちる。栄枯盛衰の世、儚く尊い古代の日々。人生の機微に触れる傑作歴史小説。
阿倍女帝こと孝謙天皇に寵愛され、太政大臣禅師や法王などの高職に就いていた頃の面影は、もはやない。女帝の死後すぐに下野国薬師寺別当に任ぜられた道鏡は、空ばかり見て過ごしていた。そこに行信と名乗る老僧が近づき「憎い相手はおらぬかー」と囁く。そう問いかけられたとき、道鏡の心に浮かんだ顔は…。奈良時代、治世の安寧を願った人々の生き様を描いた珠玉の短篇集。 2019/10/09 発売