誰でもない人
私の愛した人でないのなら、
あなたはいったい、誰なの?
3歳半の息子を独りで育てるジュネヴラは、ロンドンの超一流ホテルで
見覚えのある長身の後ろ姿に目を奪われ、思わず叫んだ。「ルーク!」
4年前に燃えるような恋に落ち、幸せの絶頂で姿を消した人。
必ず戻ってくると信じて待ち続けた、私の愛しい、息子の父親……。
ゆっくり振り向いたその男性の顔にはしかし、むごたらしい傷跡が。
「人違いをなさっているようですね、お嬢さん」
アメリカで出版業を営むクリスチャン・ネモと名乗った彼こそ、
彼女をこのホテルに呼び出した仕事の取引相手だった。
けれども、ジュネヴラには彼がルークとしか思えなかった。
ルークの背中には、ほくろがあったはず。それを確かめられたら……。
大作家エマ・ダーシーが1980年代に描いた、劇的なシークレットベビー・ロマンスをお贈りします。愛しのルークの背中にはほくろがあったはずだと思い出したジュネヴラ。やがてクリスチャン・ネモの背中に触れるチャンスが訪れますが、驚きの結果が……。