小説むすび | 地下鉄駅

地下鉄駅

地下鉄駅

発売日

2025年10月28日 発売

ジャンル

生を手離さずにいることは、こんなにも難しいーー。
失業、借金、いじめ、病気……駅で自ら死を選ぶ人々と、その防止に奔走する地下鉄職員・葉育安。
現代台湾文学を牽引する作家・何致和が、都会の声なき声を拾い再生を描く台湾発の話題書。
台湾文学賞、誠品読書職人賞など受賞多数!



葉育安(ヨウ・イクアン)、45歳、思春期の娘と認知症の老母との3人暮らし。
優柔不断、すべてに受け身で生きる彼が
地下鉄の自殺防止プロジェクト長として向き合うことになったのは、
地下鉄のホームで今まさに自死へ向かう人たち。

会社のお金を横領したサラリーマン、SNSで失恋を晒された中学生、持病に悩む老人、周囲から羨まれながらも生きる気力を失った女性……自殺防止プロジェクトリーダーを任せられた育安は、なんとか成果を出そうと試行錯誤を重ねるも、自らの足でホームから飛び降りる人たちを止めることはできない。
それでも群集のなかに身を置いて、日々を生きていく寄るべき人々の体温が、見知らぬ他人をいつしか温めていくーー出口のない問題を抱え生きる全ての人へ、ささやかでも、明日へ向かう力の一端になる物語。

現代社会のひずみや抑圧を描いたソン・ウォンピョン『アーモンド』、ハン・ガン『回復する人間』らにも通じるストーリーテラーの初邦訳。

《解説:松本俊彦(精神科医・作家)》
読了後、語られなかったこと、描かれなかった余白に読者は深く心を揺さぶられ、何かを考え始める。こうした、読後から始まる独特の余韻、静かな残響音は、本作品における最大の魅力といってよいだろう。

《台湾文学金典賞授賞/選評 凌性傑(詩人・作家)》
何致和は中年男性の心境をきめ細やかに描き出し、公共交通機関と時代の鼓動を結び付け、地下鉄によって交わる人生を通じ、様々な流動を表現する。その流動感に、多声的な語り、語りの視点の交代が加わることで、重層的で、極めて読みごたえのある作品に仕上がっている。
地下鉄という現代の交通機関は、個々の実存の不安を乗せる一方で、出発と帰還を支えている。本書で最も引き付けられるのは、冷静に傍観しているようでいて、「理解しようとする」やさしさを潜めた語りである。

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