絵が現れ出た瞬間、時の船は過去へと遡行して、耳奥に残った紙のざわめきが、舳先の切り進む波の音に聞こえた。日常のなかに仄めく幽かな異界との交感。夢と現、幻視と写実が交錯する、無気味で不思議な味わいの幻想譚6篇を収録。