花房藩 釣り役 天下太平〜五月の恋の吹きながし〜
糸の向こうにあるのは必死の命。
だったらこれは遊びでは無い、戦いだ。
特に釣り好きの間では天賀太平よりは「天下太平」、あるいは顔がそっくりな「へのへのもへじ」を縮めて「へのじ」と呼ばれるこの物語の主人公は、天賀太平二十三歳。
花房藩五万三千石で釣り役を務めている。
やる事なす事すべて頓珍漢、だけどなぜかみんなに愛される釣り侍は、「天下太平日々是れ好日、世はなべて事も無し(今日は天気が良くて嬉しいな)」を口癖に、今日も竿をふるのである。
序章
第一章 いずれあやめかかきつばた
第二章 五月のお焦げせんべい
第三章 大平・命がけの釣り修行
第四章 大スズキと鬼カサゴ
第五章 五月のやぶからし
第六章 変わり膳のおぼろ月
終章 つかの間の休息