天使の誘惑
父親の急死で、ひとりぼっちになってしまった貧しい小作人の娘アンジェラは、土地の富豪ジェイコフ・メイトランドにひきとられた。南北戦争が終わったばかりの南部、アラバマ。アンジェラ17歳の春だった。彼女はメイトランドの長男ブラッドフォードに、深くあてのない想いを寄せていた。ところが、心ときめかせるアンジェラを待ち受けていたのは、ジェイコフの愛人という口さがない噂と、ブラッドフォードの不在だった。
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南北戦争はブラッドフォード・メイトランドの心にも深い傷跡を残した。南部の大地主の息子でありながら、北部に生まれ育った彼は、自らの信念を貫いて北軍に加わった。しかし、婚約者のクリスタルはこれななじり、そのあげくに彼の弟のもとへと奔ったのだ。アンジェラが5年ぶりにブラッドフォードに再会した時、彼の心はすさみ切っていた。彼を追って飛び込んだ売春宿で、彼女は自分の素姓も明かさないままその身を委ねた。それが、かつて“エンジェル”と呼んだ少女であるなどとは、ブラッドフォードは知る由もなかった。 1992/03/01 発売