ジラス宮殿の王妃
レディー・ヴェスタは、ひとり、地中海の小国、カトーナの埠頭に立っていた。カトーナの王妃にと求められたヴェスタは、父に切望され、相手の顔も知らぬまま、イギリスをあとにした。そして、ここで出迎えのミロバン男爵と会うはずだった。ところが、ヴェスタの目の前に現れたのは、ミクロス・ツァコー伯爵だった。彼は、革命が起こりそうだからヴェスタにすぐに帰国するように勧める。しかし、ヴェスタの決意は固く、何としても夫となる大公殿下に会うという。ヴェスタの頑固さに、さすがの伯爵も折れ、2人は大公殿下の住む宮殿をめざして歩き出した。