小説むすび | 奇妙な季節

奇妙な季節

奇妙な季節

定職にもつかず、母親や祖母と、もたれ合うようにふらふら暮らしていた僕が、ニナとの結婚を期にデパートに就職した。しかし、その生活は相変わらず怠惰で、いいかげんで、宣伝部に籍を置いてはいるものの、上司に頼まれたスパイ行為が唯一の仕事といった毎日だった。そこに、社長交替の話が…新社長は出世街道をつき進んで来たやり手の大物。その彼に思いがけず抜擢されて、僕の生活は一変した。独身で謎めいた新社長ベルトラン、彼につき従う二人の部下。その仲間に入ることになった喜び、うって変わった宣伝部の活気、僕はただ、酔っていた。すべての時間は社長ベルトランのためにあった。社長が生活の中心となったのだ。彼のペースにすっかり巻き込まれた僕は、ニナも家族も、友人も…何もかもを失うという悲劇が待ち受けていることを、まだ知らなかった。ルノードー賞受賞作。

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