派遣艦隊出撃せよ
回転を上げる蒸気タービン。「くらま」は船体を震わせ、岸壁を離れた。平成十四年十一月、テロ対策特別措置法による第一陣の旅立ちである。南下を続ける第二護衛隊群は、佐世保を出港して一週間後、シンガポールに寄港したのち、マラッカ海峡を抜けてインド洋へ出た。十二月二日、米艦艇に対する初の補給作業が開始され、最初の作業より十日余りが過ぎたある日-。「途切れるサイクルは短くなりますし、雑音もひどくなるばかりです」通信状態が芳しくない。群司令たる中西要海将補は、顔をしかめた。その直後、凄まじい閃光と震動が艦橋を襲った…。「くらま」以下三隻は、昭和十九年のインド洋にいた。時空を漂流する派遣艦隊を待ち受ける苛酷な運命。新シリーズ刊行開始。
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平成十三年十一月、米軍を後方支援すべく、第二護衛隊群はインド洋にいた。補給作業を順調に続けて十日あまり、突如、凄まじい閃光が彼らを襲う。その刹那、旗艦「くらま」以下三隻は、昭和十九年のインド洋を漂っていた。動揺する乗組員たち。群司令たる中西は、皆に窮余の選択を促した。決が出る-我々は旧日本軍と共同して米軍と戦う!大敗を喫したマリアナ沖海戦の逆転が、中西たちの双肩にかかった。激闘の末、辛勝に持ち込んだものの、小沢艦隊は搭載機の大半を失い、派遣艦隊も積んでいる最新兵器を多数費やした。が、中西たちの戦いは、まだ終わったわけではない。次なる戦場は、レイテ。史上最大の海戦が目前に迫りつつあった。時空を彷徨する派遣艦隊を待ち受ける試練の日々。好評のシリーズ第二巻。 2003/08/25 発売
「対空目標、本艦到達まであと三十秒!」「くらま」艦内にアラームが響きわたり、乗員の叫び声がこだまする…。先ほどまでの喧噪が嘘のように静まりかえった艦橋。傍らでは豊田艦長が舵輪を握っている。中西要群司令は懊悩していた。(なぜトマホークが向かってくる?この時代にはなかった兵器なのに)我々以外にもタイムスリップした艦がいた、というのが幕僚たちの見解だ。妥当な結論ではあったが、それなら彼らの目的はいったいなんなのか。中西はやめていた煙草を急に吸いたくなった。昭和十九年十二月三日。六十年前の世界に迷い込んだ自衛艦は、昼下がりの陽光に照らされ、ルソン海峡を北上していた。感動の完結編。 2003/12/25 発売