幻のフィアンセ
ロンドンの病院で看護師長をしているジュリアは、週2回、彼女のいる婦人内科へ回診にやってくるオランダ人医師、ファン・デル・ワーギマー教授と折り合いがよくなかった。女性看護師の大半が、有能でハンサムな彼に憧れているが、ジュリアには無愛想で、ときに意地悪とも言える言葉をかけてくるのだ。だが、教師である父が彼の息子の補習を引き受けたのを機に、彼女はファン・デル・ワーギマー教授の私生活を知るようになる。妻との死別、息子の寮生活、そして…近々、結婚予定があることを。予期していなかった事実を聞いて胸がちくりと痛み、ジュリアはいつのまにか彼に恋していた自分を戒めるのだった。