悪魔と乙女
ブルーデンスがゴシック小説を書き始めたのは、家から見えるいわくありげな館の佇まいに想像力を刺激されたからだ。その断崖絶壁に立つかつての大修道院は、今は訪れる者もない。荒れ果てた館の中に入れたら、構想も浮かびそうなのだけれど…。そんなある日、待望の好機は突然やってきた。館の持ち主レイヴンスカー伯爵セバスチャンがこの地を訪れたのだ。稲光に照らされた黒い馬車、蹄を鳴らす黒馬、漆黒の髪の美しき男性。暗い空の下、ブルーデンスは彼を呆然と見つめたー“悪魔伯爵”だわ。この人こそ、物語の主人公にぴったり!