小説むすび | ふさわしき妻は

ふさわしき妻は

ふさわしき妻は

しおれた花束を手に、クラリサはメイドのお古を着て広場に立っていた。舞踏会の夜、不良貴族に臆病者呼ばわりされて黙っていられず、花売り娘になれるか否かという賭けに応じてしまったのだ。レディが一人で夜の暗がりに立つなど危険すぎることも忘れて。案の定、通りがかりの粗暴な大男に路地裏へ引きずり込まれ、絶体絶命と思われたそのとき、長身の救世主が颯爽と現れた。彼の正体は、訳あって花嫁探しをしている不機嫌な子爵、シンジン!先ほどの舞踏会でクラリサに向かって、妻に求める条件を満たさないー慎みがなく、率直さも、節度もないと言い放った男性だ。ああ!こんな惨めな姿を、誰よりも見られたくなかった相手なのに…。

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