ふたりのアンと秘密の恋
「きみの名は?」名門貴族ジェームズ・オルドハーストに尋ねられ、ベッドに寝かされた娘は必死で答えた。「わたしは、アン…」嵐の夜、ずぶ濡れで行き倒れになっていたところを彼に拾われたが、彼女は名前以外のいっさいの記憶を失っていた。心身ともに弱り果て、不安ばかりが募るなか、何くれとなく世話してくれる優しくてたくましいジェームズに、アンはいつしか特別な想いを寄せていた。彼は誰もが結婚したいと憧れる、社交界随一の魅力的な貴公子。出自不明のわたしなんかと関わったら、彼の名誉に傷がついてしまう!密かに身を引く決意を固め、アンは屋敷からひっそりと姿を消した…。