子爵に恋した壁の花
子爵は乙女に近づいたーー
非情な企みを胸に秘めて。
両親亡きあと堕落した弟の世話に明け暮れてきたデボラは、
ある日ヴィクターと名乗る謎めいた紳士に声をかけられた。
「一曲踊っていただけませんか? 僕の傷が怖くなければ」
頬の傷さえ魅惑的な彼にダンスを申し込まれ、
おずおずと応じたデボラはなじみのない高揚感を味わった。
一曲だけーーただ、それだけ。私に恋などできるはずはないのだから。
ああ、でも、彼に触れられるだけでこんなに胸が高鳴るなんて……。
心と体に残る傷をつかのま忘れて人並みの幸せを夢見た瞬間、
デボラは残酷な運命に絡め取られた。
彼が子爵だとはつゆ知らず、無垢な瞳をきらめかせたまま。
知らぬ間に罠に落ちたデボラと、純真な彼女に惹かれながらも欺き続けざるを得ないヴィクター。偽りと真実のはざまでなす術もなく、熱く惹かれ合うふたりの運命は……。リージェンシーの名手と名高いサラ・マロリーの、繊細かつドラマチックなラブストーリーです。