小説むすび | 偶然のフィアンセ

偶然のフィアンセ

偶然のフィアンセ

幼い頃に両親を亡くし、冷淡な親戚の家で育ったロミーは、亡き祖母が遺してくれたお金で念願の外国旅行へ出た。訪れたメキシコで生まれて初めて地震に遭い、恐怖で震えていると、真っ白なスーツを一分の隙もなく着こなした男性が手を差しのべた。ドン・デルガード・ヴァルカサールースペインの名門富豪だった。彼の放つ悪魔的な魅力にロミーは心乱され、慌ただしく別れを告げたが、そのあと乗った列車が脱線。その直前に、部屋を間違えて個室に入ってきた彼と、パジャマ姿のまま救助を待つはめに…。「互いの評判を守るため、婚約者のふりをしよう」そう囁いたデルガードのブロンズ色の瞳に、不穏な光が宿った。

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