涙色のほほえみ
瞳も言葉も冷たいのに、ときに優しい。
彼の矛盾に戸惑うばかりで……。
アビゲイルはいま、早急にお金が必要だった。
看護師をしていた病院は亡き母の看病のために辞めていたし、
少しずつ切り崩していた貯金も、葬儀代で底をついてしまったのだ。
そしてオランダでの仕事で出逢ったのが、ファン・ワイケレン教授。
外科医の彼は容姿端麗で、聞き惚れるほどすてきな声の持ち主だけれど、
視線にも口調にも温かみはなく、なんだか嫌われているような気がする。
でもどんなにうとまれても、彼を見ると胸がどきどきしてしまう!
教授は昔、誰かに傷つけられて、冷たく気難しい人になったという。
彼がまた人を愛せるよう、私が役に立てたらいいのに。
だから今日も、涙を隠してほほえむアビゲイルだったが……。
唯一無二の作風で世界中のファンから愛される名作家ベティ・ニールズが1972年に発表した本作。けなげなヒロインのせつない片想いの行方やいかに?