小説むすび | 黒伯爵と罪深きワルツを

黒伯爵と罪深きワルツを

黒伯爵と罪深きワルツを

「君はそうとう変わった小娘だ。自覚はあるのかい?」伯爵に見つめられ、オリビアは逃げ出したい衝動を懸命にこらえた。物憂げな黒い瞳と漆黒の髪。危険な魅力にあふれた強烈な存在感。彼がシンフル・シンクレアー罪深きシンクレア伯爵と呼ばれるのは、名字の語呂合わせと黒い噂のせいだけではないらしい。オリビアは勇気をかき集め、ある私的な調査に行きづまったこと、その調査で先代伯爵の汚名を晴らせる可能性があることを説明した。一笑に付されながらも必死に協力を仰ぐオリビアだったが、ふいに伯爵は身をかがめ、彼女の柔らかな唇に指をすべらせた。「帰ってくれ。夜の楽しみを台無しにした償いをさせたくなる前に」

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