黄金の公爵と名もなき乙女
洒落者の公爵ブラントは事業にも成功し、満ち足りた日々を送っていた。頭の回転が速く、スポーツ万能で、神秘的な雰囲気の彼は学生時代、“金の王”と呼ばれていたー数字に強くてカードの才能があり、彼が手にした賭金の金貨同様、黄金に輝く髪がその名の由来だ。そんなブラントにとってただ一つの不安は、ある秘密をあばかれること。どれだけ努力しても、文字が理解できないのだ。この秘密がある限り、愛する女性とも、結婚とも無縁だと考えていた。ところがある日、彼は林に倒れている娘を発見する。じつに美しい!その娘はブラントの顔を見ると、さもしおらしげな様子で囁いた。「わたし…自分の名前がわからないわ」