忘れられた婚約者
身寄りなき不遇なお針子がまさか、
子爵の“亡き婚約者”だったとは……。
6年前にロンドンに出てきたメアリーは仕立屋でお針子をしている。
今の生活以前の記憶はまったくなく、天涯孤独の身だ。
ロンドンでも指折りの優秀なお針子にもかかわらず無給だが、
食事と眠る場所の心配がないだけでも感謝していた。
そんなある日の朝、メアリーはお使いの帰りがけに
黒髪に全身黒ずくめの紳士に追いかけられ、怯えながら店に戻った。
あれは誰だったの? なぜだか胸騒ぎが止まらない……。
数日後、メアリーはその謎の紳士、マシソン卿と思わぬ場所で再会し、
激しい怒りに燃えた様子の彼から一方的に問いただされる!
「結婚式の前に、きみがぼくのもとから逃げた理由を教えてくれ!」
身に覚えのないことを言われて戸惑うほかなかったメアリー。その後、不幸にも彼女は雇い主から解雇され、ロンドンの外へ追いやられてしまいます。無一文で放り出され、路頭に迷った彼女の前に現れたのは、またしてもマシソン卿で……。珠玉の記憶喪失ロマンス!