伯爵夫人の出自
こんなにも彩りに溢れた世界があるなんて、知らなかったーー
19世紀英国に舞い降りたシンデレラ・ストーリー!
煙突掃除人の娘ジェマイマはある日、余興のため貴族の結婚式に呼ばれた。上
流階級の人に囲まれ居心地悪く佇んでいたところ優しく声をかけてきたのが、
見目麗しいセルボーン伯爵ーー思わず胸ときめかせるジェマイマだが、もちろ
ん彼は住む世界の違う人。もう二度と会うこともないだろうと思っていた数日
後、その伯爵がジェマイマの家を訪ね、あろうことか便宜結婚を申し込んでく
る。聞けば亡父の遺言で花嫁を迎えないと遺産が手に入らないらしい。「結婚
してもきみはきみ、ぼくはぼくで暮らそう」思わぬ申し出にジェマイマは……。
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煙突のすすのようなモノクロの世界に、 伯爵との出逢いが色彩をもたらした。 漆黒の髪、黒の上着とスカートに、黒いブーツ。 煙突掃除人の娘ジェマイマは伝統的な盛装で、貴族の結婚式の余興に出た。 上流階級の人々に気後れしていたところ、一人の男性が声をかけてきた。 見目麗しきその男性は、第15代セルボーン伯爵ロブ。 結婚式に煙突掃除人とキスをすると幸せになれるーー そんな言い伝えに則って彼に口づけされ、ジェマイマの胸はときめいた。 一方ロブは、亡き父と祖母の奇妙な遺言に頭を痛めていた。 伯爵領と莫大な資産を継ぐ条件として、父からは4週間以内の結婚を、 祖母からは100日間の禁欲を命じられたが、適した相手がいないのだ。 いや、待てよ。この煙突掃除人の娘を、名ばかりの妻にしたら……? 透き通る白い肌と青紫の輝く瞳、そして教養と機知に富んだジェマイマこそ、完璧な伯爵夫人候補だーー煙突掃除人の娘でさえなければ。迷うロブでしたが、出逢った数日後に彼女の家を訪れ、便宜結婚を申し込みます。「結婚しても君は君、僕は僕で暮らそう」と。 2023/10/27 発売