小説むすび | 甘美な賭け

甘美な賭け

甘美な賭け

ヴェリティは、新たに転任してきた医師を見てわが目を疑った。
ベネディクト──夢中だった恋人。手酷い裏切りを知るまでは。
ある日、なんの理由もなく彼は忽然と姿をかき消したのだ。
そのあと、妊娠に気づいたヴェリティはたった一人で産み、
心にあいた空洞を埋めるため、娘だけをよすがに生きてきたーー
弄ばれて、捨てられたのに。やりきれない傷が疼くのに。
それでも彼を前にすると、全身のほてりを抑えられない。
しかも、彼が放った言葉の刃が、ヴェリティの胸を裂いた。
「君の名は?」

このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP