日本漢文学文藪
本書は、日本漢文学史上の貴重な資料の紹介や江戸時代の文人についての考説、江戸時代の一地方儒家の蔵書目録などから成る。「資料篇」には、菊亭文庫本『本朝小序集』『童蒙綴詞抄』の本文を初めて翻刻・校訂すると共に、簡略な解説、或は略注を付し、林榴岡撰『本朝世説』については、その本文翻刻と共に詳細な出典調査を提示する。次いで、「考説篇」では、中国字書『文字集略』の逸文をめぐる問題を採挙げ、撰者阮孝緒について解説し、また林家の『本朝通鑑』と『史館茗話』の関係について記し、林読耕斎や林梅洞といったこれまであまり採挙げられることがなかった文人の略伝を所収する。ことに彼らの漢詩世界の一端に言及し、先行する平安朝の漢文学との関わりを明らかにしている。また、「目録篇」では、中江藤樹門下で、後には伊藤東涯の学統に師事した、滋賀県高島市(現在)の儒家中村家に伝存する図書の目録と同家の家系譜を所収。地方儒家の学問の一端を窺いうる資料である。
資料篇
『本朝小序集』本文翻刻・付記
『童蒙綴詞抄』についてーー本文と略注ーー
『本朝世説』の基礎的研究と本文
考説篇
『文字集略』抜書ーー逸文の蒐集をめぐってーー
『史館茗話』とその周辺ーー『続本朝通鑑』とのことなどーー
林読耕斎の漢詩覚書ーー王朝文人詩とのことなどーー
夭折の文人ーー林梅洞覚書ーー
目録篇
中村家近江国高島郡五番領村蔵書目録と家系譜
あとがき