白い鶴よ、翼を貸しておくれ
1925年、若きアメリカ人宣教師スティーブンス夫妻は、幾多の困難を乗り越え、チベット、ニャロン入りを果たした。現実は厳しく、布教は一向に進まなかったが、夫妻は献身的な医療活動を通じて人びとに受け入れられていく。やがて生まれた息子ポールと領主の息子テンガは深い友情で結ばれる。だが、穏やかな日々も長くは続かない。悲劇が引き起こす怨恨。怨恨が引き起こす復讐劇。そして1950年、新たな支配者の侵攻により、人びとは分断され、緊迫した日々が始まる。ポールもテンガもその荒波の中、人間の尊厳を賭けた戦いに身を投じてゆく。亡命チベット人医師が遺したチベット愛と苦難の長編歴史小説。