口のなかの小鳥たち
本棚から本を取り出して読むというより、ギャラリーを歩くかインディペンデント映画を見るようなつもりで読めーーマリオ・ベジャティン
「おまえは小鳥を食うのか、サラ」と私は言った。
「そうなの、パパ」
娘は恥ずかしそうに唇を嚙んで言った。
「パパもでしょ」
「おまえは生きた小鳥を食うのか、サラ」
「そうなの、パパ」--本文より
几帳面で整頓好きな普通の男の暮らしに突然入ってきたシルビア、そして小鳥を食べる娘サラ……。父娘2人の生活に戸惑う父親の行動心理を写しだした表題作「口のなかの小鳥たち」など、日常空間に見え隠れする幻想と現実を、硬質で簡素な文体で描く15篇を収録。ボルヘス、ビオイ=カサーレス、コルタサル等のラプラタ幻想系譜の最先端、スペイン語圏における新世代幻想文学の旗手による傑作短篇集。
イルマン
蝶
保存期間
穴堀り男
サンタがうちで寝ている
口のなかの小鳥たち
最後の一周
人魚男
疫病のごとく
ものごとの尺度
弟のバルテル
地の底
アスファルトに頭を叩きつけろ
スピードを失って
草原地帯