小説むすび | まぼろしの馬

まぼろしの馬

まぼろしの馬

「物語の達人」が遺した大人のための童話!?
絵本作家・酒井駒子の描きおろし作品を添えて、初邦訳!
〈ディネセン生誕140周年〉

1930年頃の英国、築二百年の荘厳な屋敷を舞台に子どもの世界と心奥を描く。

病床に臥した少女ノニーのもとに、画家のセドリック叔父さんがお見舞いにやってきた。頑なに口をきかなかったノニーだが、次第にセドリックにこころを開いていく。病の原因が、かつて厩舎で仲良く遊んだ少年ビリーの死にあると知ったセドリックは、ノニーを馬具部屋に連れ出す。そこは、不思議な色と匂いがこもる静謐な世界が存在していた……。

彼は思った。自分は子どもの世界の真ん中へと到達したのだ、と。いま彼は大きな無人の床に立ち、大人になったことの悲しみを痛感していた。ずっと昔に死んだ馬の装飾品のどれが、ビリーの魔法の杖で称揚鼓舞されて、王室の戴冠式の行列に参入できたのだろうか? (本文より)

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