小説むすび | 転落者

転落者

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楽園を与えられながらもすべてに満足できなかった男-それが一連の事件を引き起こした白骨死体の生前の姿だった。男は11年間、ナヴァホ族の霊山シップロックの山頂に横たわっていた。訪問者はカラスだけ。死体はついばまれ白骨となり、登山用具があたりに散らばっていた。奇妙な事件が相次いで発生しはじめたのは、その男が地上に降りた直後だった。静かな長い年月は突如として終わりを告げる。リープホーン元警部補は白骨死体と狙撃事件の関連性、古い記憶…白人失踪事件が絡んでいるはずだと、捜査内情をチーから聞きだそうとする。相次ぐ事件に関連性など、単なるこじつけだと疑心を消せないチー警部補代理は、婚約者のジャネットが必要以上に事件に関心を示すことに気づき、捜査に身を投げだしていく-が、そこに待ち構えていたのは遺産相続、鉱山開発などの裏に潜む人間の欲望、愛欲、そして最も信じたくはなかった白人化したジャネットの姿だった。Vita brevis「人生は短い」-そんな警句を残して男は自ら落ちゆく道を歩んでいった…。

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