織られた町の罠
この町では、人の命に価値は認められない。
生き延びるため、己の技能を磨かなければ、追放あるのみーー。
ある晩、血にまみれた少女が織の家の敷地内で発見された。
舌を切られた少女の手の平に彫られていたのは、織り子のエリアナの名前だった。
少女の素性と入れ墨のことを探るうちに、
エリアナは町の背後に見えない組織の力が蠢(うごめ)いていることに気づく。
度重なる洪水が島を襲い、未知の病によって動植物や島民に異変が起こり始め、
織り子たちが織り上げた道はゆっくりと沈んでいく。
やがてエリアナは、糸が織られるように絡みあう島の過去と現在に、
自分の運命も編みこまれていることを知る。
織り子たちが織り上げた糸の壁ーーもしくは、島では固く禁じられている夢のなかにいるかのように。